ARCHITECTS' concept

初めてやる納まりだからチャレンジできる
木造のドーム土壁の曲面仕上げ

現代の土の家をコンセプトに建築設計をしていますが、今回は合板と集成材を使わずに地場の土と木でドームを作るのが課題でした。屋根を太鼓梁と母屋、かぶら束で支える垂木のシェル構造で構成しています。天窓は上に行くほど狭くなる垂木のピッチとの兼ね合いを見ながらなるべく高い位置に設置しました。メンテナンスに対する検討から最終的に手動型にしています。

私は図面に描けないものをつくりたいと常々思っています。今回は特に全てが三次曲面なので、細部の納まりまで監督さんや職人さんと現場で日々喧々諤々やりながらつくりたいと、事務所も現場近くに引っ越しました。経験豊富な各方面の方々と一緒に仕事ができて良かったです。誰もが初めてやる納まりだからチャレンジできる。おそらく二度とつくることができない木の組み方です。窓まわりの雨仕舞も時間をかけて検討しました。

天窓は湾曲する垂木の外側で設置し、屋根に馴染ませるのが難しかったのですが、明るく、木の緑が目に飛び込んできて、想像以上に良かったです。南面の庭に面した大きな開口部から冬には日射を取り入れ、北側の天窓と西と北の窓に通風させるプランですが、実際天窓からの通風効果が大きく開閉タイプにして良かったと感じています。冬の寒さに備え、土の蓄熱性を生かしたパッシブデザインです。
OWNERS' impression

暖炉と天窓がある土壁の建物
体感しながら使って行きたい

妻が運営する幼稚園の勉強会に遠野さんが来られたのが、知り合ったきっかけでした。これまで建物はいくつも建てており、色々な設計士さんが頭に浮かびましたが、今回は全く違うテイストのものをつくってみよう...という思いがあり、設計をお願いしました。寺島工務店さんは社寺建築を多く手掛けられており、木造建築の醍醐味も十分に味わえる建物に仕上がったと思います。

幾つか案をいただいた中から、家族全員で「かわいいからこれにしよう!」となり、お話を進めることになりました。わざわざそこに行く理由がある場所。非日常を感じさせる、「美しいもの」を作っていただきたいというのがこちらからの唯一の要望でした。経年変化で汚くなるのではなく、美しさが増すもの。新しい、古いという価値観を超えたもの。どの部分を見ても実現するのに大変な手間かかった建物だと思います。

子どもを含めこちらで生活をする予定はないので、純粋に別荘と考えています。だからこそ、建築的な趣向をこらして計画を進めることができたと思います。天窓は明り取りと排熱にご提案いただきましたが、北側に窓があることで柔らかな光が入り、眺望も得られました。暖炉と天窓があるこの土壁の建物をこれから少しづつ体感しながら使って行きたいと思っています。





第 14 回 長野県建築文化賞 最優秀賞(県知事賞 住宅部門)
延床面積: 58.15㎡
使用天窓: VS手動タイプ M04サイズx1台
施工: 寺島工務店
photo: 畑拓(06,07,09,11日本ベルックス)

※注意
開閉タイプやブラインドをご使用の場合、上記納まりをするとメンテナンスできなくなる可能性があります。
ご検討の際はお問い合わせください。