ARCHITECTS' concept

無骨なデザインのマンサード
天窓ありきで設計しました

敷地は緑豊かな郊外の高台にあり、南西方向に美しい眺望が見下ろせますが、西と南に建つ住宅のため、眺望は二軒の隙間からしか得られません。そこで、周囲の建物の南北グリッドの配置には従わず、南西に斜めに軸を持つ筒状のプランとして隙間に眺望が抜けるようにしました。自邸の設計なので、好きなオーストラリア人建築家Glenn Murcuttの無骨なデザインをイメージして、屋根-外装には大波板のガルバリウム鋼板を使用しています。

回転式天窓GGLタイプが気に入り、床面積を損なわずに天窓の手元使用を実現する屋根形状を考えてマンサード屋根に。天窓ありきの設計です。回転式天窓は機能的で手元で使いやすいデザインになので、もっと大きなサイズもあると嬉しいです。卓越風向である南風を南東の長い面(桁行方向)で受けるとき、北西の天窓だけが負圧となるので、風は家の中を回って妻側から抜けることをイメージしました。

ロールケーキのような筒の内部は、生活スペースであるコア部分を、「吹抜け」と「すのこ」から成る光と風の循環スペースがとりまく形になっています。冬は土間に据えた薪ストーブの暖気が「吹抜け」「すのこ」を上昇して二階を暖め、夏は地窓から入る風が、熱気を天窓から押し出し、向かい合う天窓どうしを風が通り抜けます。この構成が効果的に採光と通風に働いて、一日中明るく、冷暖房は薪ストーブ一台で済む。という計画なので、エアコンは設置していません。
OWNERS' impression

眺望が抜ける格納庫のような一室空間
圧倒的な明るさと風通し

格納庫さながら、フロアの半分以上を占める土間を持つがらんどうの一室空間は、まるで飛行機の格納庫のよう。広い土間スペースは、趣味の二輪置場にとどまらず、整備、トレーニング、DIYの作業場にもなっていて、ガレージで行う趣味の活動が、食・住と同じく主役となるライフスタイルが実現できたと思います。斜め壁の回転式天窓のそばでは、屋根裏の秘密基地のような特別な場所にいる感じがします。

建物が南北に直角でなく斜めに配置されているため、妻側からの風の出入りがかなりあります。北西の天窓(VS手動タイプ)は出口専門ですが、対向する天窓の間を風が通って熱気が抜けたり、一階の地窓からそのまま上の天窓へ抜けて行ったりして、南東の天窓は出口入口どちらにもなっています。夏は地窓を開けて天窓も開けると、家の中にこもった熱気がスーッと抜けていき、とても涼しいです。35℃を超えるような日にも十分過ごせました。

開放感溢れるスペースは、望遠鏡で覗いたように眺望が抜けていて、秋には庭のもみじ(既存樹)が真っ赤に紅葉し、家の何処で何をしていても見ることができます。天窓の圧倒的な明るさも感じます。外出が多い時には一階のカーテンを締め切ることも多いですが、日が落ちるまで照明が必要な日は一日もありません。早起きなので、南東側の天窓から見える東の空が明るくなるのを見ながら気持ちの良い朝を迎えています。


所在地: 埼玉県入間市木蓮寺
延床面積: 132.04㎡
使用天窓: GGL手動タイプ MK08サイズx3台
VS手動タイプ M08サイズx3台
設計協力: Sun Drops戸塚直哉氏 太田陽貴氏
施工: 矢島工務店
photo: 畑拓