ARCHITECTS' concept

家族にとって特別な場所となる
立体路地のようなホール

計画敷地は建て込んだ住宅地の中でありながら、正面の接道側はT字路になっていて、視線が遠くまで抜けていました。東側には長屋の引き込み道路として巾2.5mの空地が確保されています。そこで、この正面に望む路地を、そのまま敷地の奥行きを利用した巾約1.5mの「ホール」につなげることを考えました。ホールには立体的な移動空間をつくり、居住スペースと外部環境とのバッファゾーンとしても機能するよう意図しています。

ホールと居住スペースを隔てる壁は意図的に厚く、外壁と同等な境界面としており、大きな開口部を設けています。ホール側の壁は質感のある外部用左官、床にはタイルを用い、室内でありながらより路地に近い関係となるように仕上げました。旗竿地のように、通りに沿って流れてくる風を正面で受ける立地で、また反対方向に天窓が開くようになっているので、南北どちらの方向からも風を導き入れる風通しの良いホールとなることをイメージしました。

街に接続された立体路地のようなホールには、書斎やピアノ、図書コーナー、洗面、テラスを組み込み、家族にとって特別な場所になるよう留意しました。気がついたら家族が皆ここで思い思いの時間を過ごし、子どもたちが動き回る移動空間と重ね合わされる、明るいテラスでもあり、洗濯物を干す場所や街を見通す展望台にもなるような、暮らしと街が重なる場所です。
OWNERS' impression

玄関上の書斎は特別に気持ち良い
主人と息子のお気に入り

海外の赴任先から帰国後、東京に居を構えるため近くのマンションに住みながらこの土地を見つけました。中々満足できるプランに出会えず、設計事務所にお願いしようと考えていたところ、友人の紹介で川辺さんのところを知りました。そこで最初に出していただいたプランが気に入ったので、その後は打ち合わせ開始から竣工まで1年という短期間で完成しています。

正面に伸びている路地への眺めが良く、窓を開けると風も通るので、特に春、秋は天窓も開けて気持ち良く過ごしています。1階が寝室と子ども部屋、洗面、浴室、ユーティリティーで、2階がLDKなので、(奥様は)2階で生活する時間が長いと思います。リビングでは、東面の大きなハイサイドから朝日が差したり月が見えたりするのが良く、ダイニングでゆっくりしたり、料理が好きなので広いキッチンにいることも多いです。

ホール中央を照らすように階段上に天窓が付いているので、2階から一段上がった玄関上にある書斎が特別に気持ち良いのだと思います。PCスペースになっていて、主人と息子のお気に入りの場所です。通りを歩いてくる人から生活空間が見えることを心配していましたが、玄関の扉を開けなければ見えないので気になりません。息子達は楽しいのか良く階段を駆け足で上り下りしています。それぞれ好きな場所があるから良いのだと思います。


延床面積: 87.25㎡
使用天窓: VS手動タイプ M08サイズx1台
担当: 川辺直哉、西岡諒
施工: 礎コラム
photo: 畑拓